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短編小説 #09.吸血鬼の家族 

母親が常備していたトマトジュースは、動物の血だったこと。家族みんな、日光の光を浴びると、皮膚が爛れてしまう病気を患っていたこと。幼い頃から感じていたこの家の妙な、違和感。むしろ気付くのが遅かったぐらいだ。
「じゃあ僕も、理沙も…吸血鬼なの?」
母親は、悲しく微笑んで頷いた。

「昼間、あまり外に出れないのもその為よ。血は、料理に少しずつ混ぜてた。でも、これから正志達が大人になるにつれて、それだけでは間に合わなくなるでしょう。そろそろアナタも、これを飲まなきゃいけないわね。」
コップに真っ赤に染まるドリンクが注がれる。
嫌だ。しかし…これを飲まなければ、母は哀しむだろう。僕は、赤いドリンクを口に含んだ…が、気分が悪くなってすぐに吐き出した。鉄臭い匂いと、味が、喉に突き刺さる。
「こんなの…飲めないよ。」
すると母親は、哀しむどころか、ケラケラと笑った。
「ははは。そういう事だったのね。」
「ふざけてるの?」
「あらやだ。母さんが吸血鬼なのは本当よ。…つまりは、あなたはお父さんに似たのかもしれないわね。」
「じゃあ、僕は人間として生きられるんだね。母さんや理沙には、悪いけどね。そのほうがいいや。」
「そうはいかないわよ。あなたのお父さん、宇宙人だもの。」
「ああ、そうですか。」
「宇宙人の血が濃かったら、もっと大変かもよ…まあ、その辺の折り合いをつけて頑張って生きて頂戴ね。とりあえずコレ。誕生日おめでとう。」
母親はポケットから、何かを取り出して机の上に置いた。それは奇妙な造形をした、楽器のようなものだった。いやこれは、人間…? 人間の関節と骨が不自然に歪み、ラッパのような形になって直立していた。
「父さん!」
それは父親だった。まるで原型を留めていないが、それでも元気に生きていた。
「どういう事だよ! 父さんが、こんなビックリ人間だって知らなかったよ!」
「ビックリ人間じゃなくて、宇宙人よ…さっき説明したじゃないの? 人の話はちゃんと聞きなさいよ。」
次の瞬間、父親の指先が、ツタのように伸び始め、その先に薔薇の花が咲いては、枯れ落ちた。何かを話そうとしているようだったが、それは言葉でなくて、笛の音色になって響くだけだった。それを見ている僕は、イライラして思わず怒鳴る。
「ふざけてないで、仕事しろよ!」
「もう、お父さんだって頑張ってるのよ。わかってあげて。こんなだから、どこも雇ってくれないのよね。宇宙人差別だわ。あー喋ったら、喉が渇いたわ。」
母親は、台所から包丁を取り出し、いきなり父親に斬りかかった。斬られた父親は、丸いボール状に変形し、傷からあふれ出る血を、飛び散らないよう受け皿となった。母親はそれを予期してたかのように、その血を、空のペットボトルに注いだ。
「まさか…」
信じられない光景だった。母親は、早速その血をコップに注ぎ、ぐぐっと飲み干した。父親は、一瞬で傷口が塞ぎ、人間の姿に戻った。
「いつもありがとう。あなたに出会えたお陰で、私は人殺しにならないで済んだわ。」
母親は、笑っていた。父親は、何も言わず見つめ返した。
ふたりは幸せそうだった。

夜になって、妹の理沙が帰ってきた。喉が渇いて苦しいとつぶやいていた。僕は早速、吸血鬼の家系であることを打明け、血の入ったペットボトルを渡そうとした。しかし、理沙はそれを受け取らず首を横に振る。
「お父さんの血なんて飲めない。」
すると母親が、神妙な顔でつぶやく。
「私達は、血を飲まないと生きていけないのよ。でも、まわりの方に迷惑をかけるわけにはいかないわ。でもお父さんの血なら…その心配は無いの。わかってくれるわよね?」
「違うわ…母さん。そうじゃないの。ただ…こっちのほうが美味しそうだったら…。」
「あら、それもそうね。」
ふたりは、僕のほうを見つめニヤリとつぶやいた。
「じゃあ、包丁もってくるね★」

その日、僕は家を出た。

END
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[2007/07/19 01:47] 未分類 | TB(0) | CM(0)

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